MT (Management Tools)
「TOC思考プロセス」とは、TOC(Theory of Constraints: 制約理論)の創始者であり、『ザ・ゴール』の著者としても有名なエリヤフ・ゴールドラット博士が中心となって開発した「論理思考ツール」です。
1986年に「ジョナプログラム」として開発された後、1990-1993年にかけて、組織が持つ問題を全体的に分析し、「戦略的な解決策」を導き出す手法として、3つの質問に対する5つのツリーが体系化されました。
「ジョナプログラム」では戦略的かつ組織的な解決策を開発する手法を対象とする一方で、管理者には自身の意思決定能力を強化し、日常の課題に上手く対処していくことも必要とされます。
そのため、これらのツリーのエッセンスを抽出し、「日常の問題」に対して“普段使い”できることを目的としたプログラムが1995年に開発されました。
それが 「Management Tools(マネジメントツール)」、略して 「MT(エムティー)」 です。
マネジメントツールでは「クラウド」、「ネガティブブランチ」、「中間目標マップ」という3つのツールを単独/組合せで用いることにより、管理者として必要な「マネジメント力」を強化します。
クラウド
自分が解決しようとする問題の本質を見極め、妥協することなく、WIN-WINの解決策を構築するのが、クラウドです。
クラウドの特徴は、問題を「対立」の構造で論理的/図式的に捉え、行動や手段そのものではなく、対立の背後にある前提条件に目を向けることで、対立の解消に注力します。
クラウドは、ゴールドラット博士の著書(『ザ・ゴール』シリーズ)の中でも度々描かれているように、仕事の問題からプライベートの問題までクラウドは多くの場面で使用することができます。
しかし、日々の問題の中には、一過性で単純なものもあれば、慢性的で組織的な要素の絡んだ複雑なものまで様々あります。
重要なのは、対処する問題のタイプを見定め、その問題の性質に合ったアプローチで問題解決に取り組むことです。
ネガティブ・ブランチ
立案した解決策がどのような副作用を起こす可能性があるのかを事前に把握し、その予防策を見つけるのが、ネガティブ・ブランチです。
クラウドで見つけた解決策(インジェクション)がなんだかしっくりこない、確信が持てないような場合、それは考えついたアイデアに現実味を感じることができていないことを意味します。
それは、他者のことを考慮してであったり、自分自身が解決策を取り巻く状況を良く理解できていないことが影響しているかもしれません。
その場合、その解決策が原因となって生じうる副作用と、それが起こるロジックを明らかにすることで、自分が見落としていた解決策の必要要素に気づき、「解決策をより現実的なものに作り上げる」ことができます。
そのために有効なツールが、「ネガティブ・ブランチ(NBR)」です。
IO(中間目標)マップ
解決策導入が成功するまでの行く手を阻む障害を明らかにし、それらを克服するためのステップを定義するのが、IO(Intermediate Objective)マップです。
解決策(インジェクション)は、今までとは異なる新しいアイデアであるため、その解決策を導入するということは、野心的な目標となります。
大がかりな解決策になるほど、目標達成までには様々な困難(=障害)が伴います。
そのなかには、どのように克服すればよいか皆目見当もつかないような障害もありうるでしょう。ひとは、このような障害に遭遇した場合、せっかくの解決策を妥協してしまったり、実行そのものを諦めたりすることさえあります。
そのため、解決策の実行ステップを作成する際は、このような致命傷となりかねない障害(ショー・ストッパー)を認識し、それを踏まえた上で、障害の克服に必要な「中間目標」を構築していく必要があります。
そのための具体的な手順について、「中間目標マップ(IOマップ)」で学びます。
期待成果
TOCの論理思考手法「MT」は、次のことを提供します。
- 組織のパフォーマンス向上を阻害する「真の問題」をつきとめることができる
- 周囲に対する説明能力が向上する
- 互いの意見を論理的に検証し、win-winの解決策を構築できる
- 生産的かつ協調的なコミュニケーションが拡がる